特別展
日本画アヴァンギャルド KYOTO 1948-1970
2026年2月7日-2026年5月6日
会場[ 新館 東山キューブ ]
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これが日本画!?戦後京都で生まれた日本画の反骨的創造運動を総覧して紹介!
戦後、伝統と革新のはざまで揺れる日本画界において、京都では若き画家たちによる前衛的な試みが始まりました。本展では、1940年代以降に結成された3つの美術団体である創造美術、パンリアル美術協会、ケラ美術協会を中心に、日本画の枠を問い直し、新たな表現を模索した気鋭の若手画家とその軌跡を紹介します。
本展を通じて、京都画壇の批評精神と創造性に着目し、現代へと連なる日本画のもうひとつの系譜を紐解きます。本展ではこの戦後京都で生まれた日本画の反骨的創造運動を「日本画アヴァンギャルド」※として総称し紹介します。
※「アヴァンギャルド」という言葉は、フランスにおいて19世紀半ばに文化芸術的な用法として広まり、急進的な芸術家たちを指すようになったものです。その後、過去の伝統を見直し、革新的なものを目指す運動全般を広く示すようになりました。
基本情報
- 会期
- 2026年2⽉7⽇(⼟)〜5⽉6⽇(⽔・休)
※会期中、一部に展示替えあり。
前期:2⽉7⽇(⼟)〜3⽉1⽇(⽇)
中期:3⽉3⽇(⽕)〜4⽉5⽇(⽇)
後期:4⽉7⽇(⽕)〜5⽉6⽇(⽔・休) - 時間
- 10:00~18:00(最終入場は17:30まで)
- 会場
- 新館 東山キューブ
- 休館日
- 月曜日(祝・休日の場合は開館)
- 観覧料
- 一般 1,800円
⼤学・専門学校生・高校生 1,300円
ペア券 3,200円(一般のみ)
中学生以下無料
※価格はすべて税込み※すべて前売価格の設定はありません
※20名以上の団体料金(一般1,600円、⼤学・専門学校生・高校生1,100円)
※障がい者手帳等ご提示の方はご本人及び介護者1名無料(障がい者手帳等確認できるものをご持参ください)
※学生料金でご入場の方は学生証をご提示ください
チケット発売日:2025年12月1日(月)10:00
- 主催:京都市、関西テレビ放送、京都新聞
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本展について(担当学芸員 森光彦)
大野俶嵩《緋No.24》1964年、京都市美術館蔵 京都は、近代⽇本画を牽引する⽂化的中⼼地のひとつとして発展し、多くの優れた⽇本画家の輩出の基盤となってきました。
しかし戦後になると、旧体制の反省の⾵潮のなかで、伝統⽂化としての⽇本画への批判の声が⾼まり、既存の権威や制度への反発からも「⽇本画を滅ぼすべし」という主張も⾒られるようにもなり、⽇本画に逆⾵が吹きます。
そうしたなか、京都画壇では⽇本画の枠組みを⾒つめ直し、継承/⾰新を模索して前へ進もうとする「前衛⽇本画」の運動が 1940年代以降に活発化していくこととなりました。戦後を担う気鋭の若⼿画家たちがその中⼼となり、同志が集まり意欲的な美術団体が結成されます。京都という⽇本画制作の中⼼地にいたからこそ、旧態依然とした⽇本画を⾝近に批判することができ、⽇本画の将来を創造する底⼒を⾒せることができたといえます。京都市⽴絵画専⾨学校、のちの京都市⽴美術⼤学(現在の京都市立芸術大学)もまた、同世代の⽇本画家たちをつなぐ場となり、前衛運動の基盤となりました。大野俶嵩《緋No.24》1964年、京都市美術館蔵 みどころ
1. 戦後日本のスター日本画家30名超が集結
三上誠《灸点万華鏡1》1966年、福井県立美術館蔵 上村松篁(1902-2001)、堂本印象(1891-1975)、秋野不矩(1908-2001)など日本画の常識を覆すような表現に挑んだ精鋭たちは、今や現代日本画を語る上では外すことのできない巨匠に。彼らが若き日々を過ごし活躍の中心であった京都から、戦後の日本画の歴史と動向を総覧します。その他にも岩田重義(1935-)、三上誠(1919-1972)、下村良之介(1923-1998)等が出展予定です。
三上誠《灸点万華鏡1》1966年、福井県立美術館蔵 2. 復興期・京都の熱狂
向井久万《浮遊》1950年、歴史館いずみさの所蔵 日本画界に巻き起こった「アヴァンギャルド」を戦禍の爪痕が残る京都の社会とともに振り返ります。創作への意欲と情熱に燃えた芸術家たち。その作品には街や社会の変化が大きく反映されました。戦後の社会状況を示す資料も併せて鑑賞し美術業界で奮闘した作家たちへ思いを巡らせることができるでしょう。
向井久万《浮遊》1950年、歴史館いずみさの所蔵 3. 「これが日本画?」
野村久之《Sanctuary》1960年、京都市美術館蔵 日本画アヴァンギャルドでは、既成の「美しさ」をくつがえす、自由で挑戦的な表現が多数誕生しました。「余白の美」「墨」「岩絵具」などの<伝統美>など、これまでの日本画のイメージを塗り替える作品が目白押しです。私たちの想像を超える作品に触れることで、「こうきたか!」「これは日本画?」と、思わず目を見張る経験となるでしょう。
野村久之《Sanctuary》1960年、京都市美術館蔵 -
本展で主に紹介する美術団体
創造美術(1948年創立~現在は創画会として存続)
「我等ハ世界性に立脚スル日本絵画ノ創造ヲ期ス」(会の綱領)
世界性に立脚する日本絵画の創造を標榜し、東京と京都の意欲的な日本画家が呼応して結成された在野団体。既存の画壇から脱却し、自由にして純粋なる環境を求めた。
本展で主に展示するのは、上村松篁、菊池隆志、向井久万、奥村厚一、秋野不矩、沢宏靭、広田多津ら京都側の創立委員。パンリアル美術協会 (1949創立~2020解散)
「吾々は日本画壇の退嬰的アナクロニズムに対してここに宣言する。眼玉を抉りとれ。四畳半の陰影にかすんだ視覚をすてて、社会の現実を凝視する知性と、意欲に燃えた目を養おう。」(パンリアル宣言)
京都市立絵画(美術)専門学校日本画科の卒業生が中心となって発足した前衛団体。意欲に燃える若手画家たちが、戦後の革新的運動として起こした。「パン」は「汎」を表し、「リアル」は「リアリズム」の意で、社会の現実を反映させながら、抽象表現や先端的な西洋美術を取り入れて日本画の再起を目指した。
本展では創立会員である三上誠、山崎隆、星野眞吾、不動茂弥、大野秀隆(俶嵩)、下村良之介などを展示。ケラ美術協会(1959創立~1964解散)
「20世紀後半は宇宙時代だ。地球上の争いのごときは、宇宙からみれば夫婦げんかにすぎない。ましてや日本の、しかもこの中の画壇の動きに至っては、まるで大海に浮かぶ水泡のようなものだ。われわれはこのような画壇の因襲を強烈な情熱で打破せんとする。」「その反抗を通じて、真にユニークな絵画を創造することだ。われわれは宣言する。」(宣言書)
京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)日本画科出身の若手画家らによって結成された前衛団体。グループ名の「ケラ(Cella)」は、ラテン語で「細胞」や「単位」を意味する言葉で、「細胞が分裂し、拡大するように、この運動があらゆる人たちに賛同される」という願いが込められている。「日本画」の概念にとらわれることなく、より広い視点から「真に創造的な絵画」を生み出すことを目指した。日本画の顔料だけでなく、油絵具やエナメル塗料、ビニール塗料、墨汁、ペンキ、さらには漆、蝋、石膏、布、ゴム、泥、ムシロ、石なども画材とした。
本展で主に紹介するのは、創立から活躍した岩田重義、楠田信吾、久保田壱重郎、榊健、野村久之など。