初夏の流 1918年
野長瀬晩花 (1889-1964)
作品解説
強烈な色彩による渓流の景が画面を覆い、大ぶりの六曲屏風の凹凸で、起伏に富む山中がほうふつとされる。照り映える緑、豊かな黒髪の女性の赤や青の衣装が、厚塗りの岩絵具の質量感で迫ってくる。裸の少年の姿も見え、開放的で爽やかな初夏の気分が横溢する。
1918年(大正7年)
木綿着色 屏風 六曲一隻
176.5 × 555.0 cm
上:左隻 下:右隻
野長瀬晩花 Nonagase Banka
和歌山県田辺市に生まれる。本名弘男。はじめ大阪で中川蘆月に学び蘆秋と号した後、谷口香嶠に師事、京都市立絵画専門学校別科に入学して晩花と号するが、翌年には退学する。第16回新古美術品展で《被布着たる少女》が三等賞受賞。しかし文展では洋画的画風が受け入れられず、反官展姿勢を明確にしていく。国画創作協会結成に参加。出品を続け、この間渡欧を果たす。国展解散後は画壇を離れ、戦後は疎開先の信州の画家たちと交流するなど制作を続けた。