エキシビジョンクルーズ

ザ・トライアングル「荒木優光:わたしとゾンビ」関連プログラム
アーティストトーク荒木優光×塚原悠也「スウィートチリソース」

2021年3月25日

ザ・トライアングル「荒木優光:わたしとゾンビ」の関連プログラムとして、アーティストトーク 荒木優光×塚原悠也「スウィートチリソース」が2020年12月20日に美術館の講演室で開催された。本展を担当した国枝かつら(当館アソシエイト・キュレーター)が進行役となり、出展作家の荒木優光と「contact Gonzo」のメンバーで「KYOTO EXPERIMENT」共同ディレクターである塚原悠也が対談を行なった。

日時 : 2020 年12月20 日(日)14:00〜15:30
会場 : 京都市京セラ美術館 講演室(本館地下1階)
登壇者 : 荒木優光、塚原悠也、国枝かつら(京都市京セラ美術館 事業企画推進室 アソシエイト・キュレーター)

展覧会「わたしとゾンビ」について

左から国枝かつら、荒木優光、塚原悠也

今回の展示は荒木にとって美術館での初個展となる。展示の依頼をした国枝は、「荒木さんはサウンドアーティストというより、『音を聴く場をつくる人』だと思います。トライアングルの建築を使って、どうやって展示を組み立てられるのか興味がありました」と話した。

荒木は普段から展示をつくる際に、「場所を見て、場と対話しつつ、展覧会をつくっていくこと」を心がけているという。「最初にこの場所を見た時は、正直狭いなと思いました。閉じられていなくて、通路のようでもある、社会性のある空間。斜め上には窓があったり、凹んだ部分があったり。どう使おうかというところからスタートしました」。

荒木は京都在住なので、美術館から家が近いという地の利を生かして会場に何度も足を運びながら今回の展覧会を組み立てていったと言う。「細かいことをして空間を埋めるよりも、モニュメント的なものをドンと建立させる方がいいかなと思いました。人々がそこを通り過ぎていって、たまに立ち止まる人もいる。街なかの噴水みたいなイメージが浮かんだんです」。

展覧会では、スピーカーとモニターで構成された巨大な作品が、空間の真ん中に置かれて回転していた。「『未来の室内楽』を意識した」と荒木。これまでの荒木の作品は、主には音や映像という「データ」で成り立っていた。それに言及した上で、塚原は「今回は物体として圧があって、次の展開に進んでいるようだった」と話した。モニターの映像には、草むらや海といったさまざまな場所を背景に、スピーカーが映っていて、音が再生されている。人は一切映っておらず、スピーカーが水に沈められたり、燃やされたりしている場面がある。「スピーカーを擬人化しているのか」と塚原が尋ねると、荒木はこう答えた。「スピーカーは単なる再生装置。でも見る方は人のように感じることもあるかと思います。音が鳴っていて、なんやろうと思って、バンッと転がしてみたら『あ、スピーカーやった』って、ドキッとする感じ。鑑賞者が勝手に想像して、感情移入する。そういう仕掛けを並走させることが自分の作品には多いかも。」

映像の舞台となったのは、ひと気が少なく、人工物もあまりない京丹後。撮影はカメラマン、録音、アシスタントに荒木を加えて4人で行われた。カメラマンはcontact Gonzoのメンバーでもある松見拓也だ。「その場の音と共鳴させて、別の音をファーッと出して。場所にある音を際立たせることで、ただの風景がグッと良なる。そうして撮りためたコレクションを、淡々と60個合わせました」と作品について説明を加えた。

チームで作品をつくることについて

当日の様子

塚原はcontact Gonzoの活動のほかに、ソロで個展等を行うこともある。ソロ名義であっても、音や映像を使う際は得意な人物に依頼するなどして、チームで作品をつくることが多い。「自分名義の展覧会って、自分が責任をとらなきゃいけないところがしんどくない? 現場に行って、スタッフたちに『これを試したいです』って言ってやってもらうんだけど、うまくいかずにドン滑りして全員が『はぁ』ってなったりする」(塚原)。

荒木もバンド「NEW MANUKE」のメンバーとして活動しており、個人の活動とグループでの活動は全く異なるものだと共感する。「そういう点で今回の作品制作は、これまでの経験が生かせていい感じにやれたなと思っています。何度か一緒に仕事をしたことのある信頼できるメンバーと一緒だったから、撮影なんかも、最初は一緒に見ながら決めていくけど、そっからは話が早くて、もう僕が見なくてもいいやって」(荒木)。「松見が撮った映像は、荒木くんの感性をよく理解しているの気がしました。ボケてんのか、ボケてへんのか分からないギリギリを行く感じ。ノスタルジックに寄せて、でも決定打は打たないところとか」(塚原)。

今回の作品に限らず、作品制作は音響、映像、構造体を作る人などそれぞれの分野のスペシャリストによって支えられている。舞台の音響を担当することもある荒木は、contact Gonzoをはじめ、金氏徹平、田村友一郎、岡田利規など、他の作家の協働も多い。その経験が、自身の作品制作にも活きているという。「僕もすごいと思っている人たちの現場では、いろんなことが盗める。でも、上下関係がピラミッド型であると当たり前に思っている人とは仕事できないですね。こうした方が面白いんじゃないですかって言っても、全く聞く耳を持たなかったり」(荒木)。「僕らが荒木くんに音のことをお願いする理由としては、もちろん音の人として、期待しているんですけれど、結局は一緒にいて面白いかとか、遊べるかというところが、楽しみになってくるわけです」(塚原)。京都市内から山口県まで、途中テント泊をしながら原付で走る4泊5日の過酷な録音にも、荒木がついてきてくれたと思い出を語った。

音というものは、聴く環境があってはじめて成り立つということを普段から意識していると話す荒木。「アーティストたちに呼んでもらう仕事も、僕からしたらいい実験なんですよ。ただ音の作品をつくるというだけだと、歴史の中でやり尽くされているので、それとは別のところに『荒木節』があると思うのです。舞台や映像、ビジュアルアートに音をつける経験を活かして、空間で音をデザインするというのが、他にはあまり例がない、自分のオリジナリティをつくっているのだと思います」(荒木)。

(文:京都市京セラ美術館 事業企画推進室 ラーニング)

 

登壇者プロフィール

荒木優光(あらき・まさみつ/アーティスト/出展作家)
1981年山形県生まれ。2005年京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)映像・舞台芸術学科卒業。シアターピースやインスタレーションなど多岐にわたる作品を発表。主な公演に「おじさんと海に行く話」(京都芸術センター講堂、2018年)、「増幅する部屋」(愛知県芸術劇場小ホール、2018年)、主な個展に「Acoustic Device 騒音のための5楽章」(トーキョーワンダーサイト本郷、2016年)など。サウンドデザイナーとしてアーティストとのコラボレーションも多数手掛ける。

塚原悠也(つかはら・ゆうや/アーティスト)
1979年、京都市生まれ、大阪市在住。関西学院大学大学院文学部美学専攻修士課程修了。2002年にNPO DANCE BOXのボランティアスタッフとして参加した後、運営スタッフとして勤務。2006年パフォーマンス集団contact Gonzoの活動を開始。殴り合いのようにも、ある種のダンスのようにも見える、既存の概念を無視したかのような即興的なパフォーマンス作品を多数制作。またその経験をもとに様々な形態のインスタレーション作品や音声作品、雑誌の編集発行、ケータリングなどもチームで行う。2011-2017年、セゾン文化財団のフェロー助成アーティストとして活動。

国枝かつら(くにえだ・かつら)
京都市京セラ美術館 事業企画推進室 アソシエイト・キュレーター。

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