入場自由
中立点|In-Between
―第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示帰国展
2026年1月24日-2026年3月1日
会場[ 桜水館 ]
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第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示風景 © 高野ユリカ 1933年の美術館創立と同時に美術館の敷地内に建てられた旧事務所棟(現「桜水館」)における改装工事中途の空間を利用して、第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示「中立点|In-Between」(主催:独立行政法人国際交流基金)の帰国展を開催します。
第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館展示(於イタリア、2025年5月10日〜11月23日に開催)は、生成AIとの未来を、人間と非人間、環境との「あいだ」に開かれた対話の場として提示するものでした。そこでは、作品としてはふたつ、ひとつは、SUNAKI(砂山太一と木内俊克によるユニット)による1階ピロティと外部空間のインスタレーション、もうひとつは、藤倉麻子+大村高広による2階ギャラリー内のインスタレーションとが、相互補完的に組み合わされ、 ひとつの作品になって響き合うという、あまり例のない構成が試みられました。キュレーションは、青木淳と家村珠代が担当しました。
本帰国展は、1933年の美術館創立と同時に美術館の敷地内に建てられた旧事務所棟(現「桜水館」)における改装工事中途の空間を利用して、キュレーションチームとふたつの作家チームの、三つの主体が交差したヴェネチアでの展覧会を、それぞれの主体が独立して、別の形に置き換え、京都にて展示するものです。
ヴェネチア・ビエンナーレ日本館の帰国展はこれまでにも開催されてきましたが、美術と建築の両分野において、東京以外で開催するのは初めての試みとなります。
芸術や建築の高等教育機関を多数有するここ京都で開催することによって、さらなる国内外の文化交流と創造の発展を期待し、開催します。【参考】第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の日本館展示
詳細はこちらヴェネチア・ビエンナーレ建築展にはパビリオン別の参加が開始された1991年以降、日本は毎回参加を続け、日本の優れた建築家や作家、そのコンセプトを、世界に向けて発信し交流する場として重要な役割を担ってきました。日本館の受賞としては1996年(磯崎新コミッショナー|パヴィリオン賞金獅子賞)、2012年(伊東豊雄コミッショナー|パヴィリオン賞金獅子賞)、2016年(山名善之キュレーター|特別表彰)があるほか、ビエンナーレ財団主催の企画展に招聘される日本の建築家も数多く、2010年の第12回展は妹島和世が女性初の総合キュレーターとして建築展全体を統括するなど、日本の建築は国際的に高い注目を集めています。 https://www.labiennale.org/en
第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示風景 © 高野ユリカ 基本情報
- 会期
- 2026年1月24日(土)~3月1日(日)
- 時間
- 10:00~18:00(展覧会入場は17:30まで)
- 会場
- 桜水館
- 休館日
- 月曜日、ただし2月23日(月・祝)は開館
- 観覧料
- 無料
<観覧について>
・会場は半屋外空間のためご自身で防寒等対策のうえお越しください
・工事途中の状態を生かした会場となっているため、床面や壁面の木材・コンクリート等露出部分にはお手を触れないようご注意ください
・地面の段差には十分ご注意ください。安定した歩きやすい靴でのご来場をおすすめします。
・会場内で飲食はできません
・会場内にトイレ、ロッカー、クロークはありません。本館内設備をご利用ください
・ペットを連れてのご入場はできません(盲導犬・介助犬は除く)
・工事途中の建物であり、バリアフリー対応になっておりません。車いす、ベビーカーでのご入場については、事前に美術館までご相談くださいプロフィール
キュレーション・チーム青木淳(キュレーター)/1956年横浜生まれ。建築家。1982年東京大学修士課程建築学修了。1991年青木淳建築計画事務所(現在、ASに改組)を設立、主宰。京都市美術館(通称:京都市京セラ美術館)館長。東京藝術大学名誉教授。
家村珠代(キュレトアリアル・アドバイザー)/1960年東京生まれ。インデペンデント・キュレーター。1992年東京藝術大学博士課程満期修了。1991年〜2009年目黒区美術館学芸員。2016年より多摩美術大学芸術学科教授。出展作家チーム
藤倉麻子/1992年埼玉生まれ。アーティスト。2016年東京外国語大学外国語学部南・西アジア課程ペルシア語専攻卒業。2018年東京藝術大学大学院メディア映像専攻修了。
大村高広/1991年富山生まれ。Office of Ohmura主宰。2020年東京理科大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。博士(工学)。2023年より茨城大学工学部都市システム工学科助教。
木内俊克/1978年東京生まれ。SUNAKI共同代表。京都工芸繊維大学 未来デザイン工学機構 特任准教授。2004年東京大学建築学専攻修士課程修了。
砂山太一/1980年京都生まれ。SUNAKI共同代表。京都市立芸術大学美術学部総合芸術学専攻 准教授。東京藝術大学大学院美術研究科建築研究領域博士後期課程修了。博士(美術)。- 主催:京都市、AS
- 協賛:青木淳後援会
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桜水館 1F SUNAKI(木内俊克&砂山太一)

第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示風景 © 高野ユリカ ヴェネチアから京都まで、垂直に立つ棒が地球の表面を横滑りしながら移動することを想像する。視点を宇宙に置いてそれを見ると、棒は時計の針の先に括りつけられたように、円弧を描いて移動する。地球の真ん中を中心に少しずつ傾く移動。地面に立って棒を見ても、その傾きは知覚できない。
ヴェネチアで青木さんたちと対話したのは、そんな想像力についてだった。
人工知能の時代、私たちはクラウド上に蓄積された膨大な画像や言葉の断片の上で対話している。だがそれは、誰かが遠い場所と時間で発した叫びや願いの痕跡も含み、それが私たちの問いに応じて立ち上がる。触れているのはごく表層だが、背景には想像も及ばない厚みがある。その背後への能動的な想像力。
建築は、目の前の素材を扱いながら、地球規模の重力や時間を同時に考える営みだ。遠いものが気づかぬうちに足元へ入り込む。
ヴェネチアの展示では、日本館を構成する七つの要素が会話する映像が中心だった。SUNAKIはそのうちふたつ、物質として存在しない「穴」と「動線リング」を、知覚するための仕掛けを制作した。建物の天井と床の中心にぽっかり空いた穴と、傾斜地に建つ日本館の周囲を廻る斜め動線リング。そこにないものを、あるものとして扱う力が建築的想像力の核心にあると信じたい。帰国展では、そのリングをヴェネチアから京都へ移動させた。ただし物体ではなく、考え方として。地球の表面に沿って横滑りさせるのではなく、宇宙的な視点でまっすぐ移動することにした。ヴェネチアの地面は京都では84°43'1.03"傾斜し、斜めリングはより斜めになった。
遠くの出来事を身近に捉えるための、小さな訓練としての中立点。
第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示風景 © 高野ユリカ 桜水館 2F 藤倉麻子+大村高広

第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示風景 © 高野ユリカ 藤倉と大村がヴェネチアで試みたのは、ヴェネチア・ビエンナーレ日本館という建築の「フィクショナルな改修」でした。それは物理的に手を加えるものではなく、日本館の構成要素ら──「穴」「柱」「壁」「階段庇」「煉瓦テラス」「動線リング」「イチイの木」──がそれぞれの視点をもつと仮構し、そこで生じる「対話」に巻き込まれたひとびとの、建築への認知を組み替えるものでした。この作品を、ここ桜水館の状況に合わせて、新たに再構成しています。
ここでは全体テーマであるin-between(間)に対して、ふたとおりの仕方でアプローチしています。いくつもの相容れない〈私〉が並び立てられた場において生じる、間。これを外から見るための装置が《Human Video》(HV)と《Objects》(O)です。HVは、5人の人物が食卓を囲む状況を映し、対話の一方の極である人間の、身体の物質性と不可逆的な時間を示します。対してOは、発話中の事物を物理的に照らし示す、標識のようなものです。あらゆる対象に視点を賦与するというフィクションに対応するように、各アクターにそれぞれ光源=円錐が与えられています。
3DCGによる《Construction Video》(CV)は、対話で発せられた言葉をその都度素材にして、虚構の風景を組み立てていく映像です。「穴」や「柱」が見ている世界が、制作者の身体と想像力を媒介にして衝突し、スクリーン上でせめぎ合っています。こうしてCVは、間のただ中へと、見るものを巻き込もうとします。
これらの映像と音、そして対話は、約17分の周期で同期上映され、ひとつの出来事として立ち上がります。
第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館展示風景 © 高野ユリカ


