
特別展
⽣誕150年 ⽊島櫻⾕
2027年10月2日-2027年12月12日
会場[ 本館 南回廊1階 ]
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動物も、山や花も、人々のいとなみも
その筆にかかれば、生き生きと輝きだす。
生命への共感と、ほのかな抒情がにじむ、櫻谷理想の世界。明治から昭和にかけて京都で活躍した⽇本画家・⽊島櫻⾕(このしま おうこく|1877〜1938)の⽣誕150年を記念し、近年再評価が進む櫻⾕の画業を過去最⼤規模で紹介する回顧展を開催します。
1877(明治10)年、京都の三条室町に生まれた櫻谷は、円山・四条派の流れをくむ今尾景年に画を学びました。自然観察をもとに動物や自然などを抒情豊かに表現した平明な画風で、1907(明治40)年の第1回文部省美術展覧会(文展)で首席となってから6年連続で上位入賞するなど、明治から昭和にかけて日本画壇を代表する一人として活躍しました。
櫻谷は、京が育んだ洗練された感覚、磨きあげた筆技、徹底した写生に基づく確かな描写を下敷きに、動物、花木、山水、歴史など様々な対象を大作から小品まで描き分け、数多くの名作を残しました。
一方、その華麗な経歴とはうらはらに、ふだんは地味な着物に粗末な袴姿で暇さえあれば写生に出かけ、また昭和に入ってからは画壇とも一線を引いて漢詩や書に親しむ生活に明け暮れた純朴な人物として知られていました。没後は長らく顧みられる機会に恵まれませんでしたが、2010年代に泉屋博古館で開催された複数の展覧会などを通して、動物画を中心に再び注目を集めるようになりました。
⽣誕150年を記念して開催する本展では、こうした近年の研究成果をふまえながら、《寒月(かんげつ)》をはじめとする代表作に、初公開作品を含めた約100点によって櫻谷の画業全体を見渡します。
画の道を真っすぐに生きた櫻谷と私たちの新しい物語が、本展から始まることに期待しています。
基本情報
- 会期
- 2027年10⽉2⽇(⼟)〜12⽉12⽇(⽇)
※会期中、一部の作品は展示替えを行います。 - 時間
- 10:00〜18:00(入場は17:30まで)
- 会場
- 本館 南回廊1階
- 休館日
- 月曜日(祝日の場合は開館)
⽊島櫻⾕ Konoshima Okoku
明治10年(1877)、都の⽂化が息づく京都三条室町の商家に⽣まれる。本名は⽂治郎。京都画壇の重鎮であった今尾景年に画を学ぶ。明治40年(1907)に、⽇本初の国が主催する公募展として開催された第1回⽂部省美術展覧会(⽂展)に出品した《しぐれ》が最⾼賞に選ばれて以来、⼤正元年(1912)第6回の《寒⽉》まで、6年連続で上位⼊賞する快挙を果たした。なかでも《寒⽉》は、櫻⾕を推す今尾景年と安⽥靫彦を推す横⼭⼤観との間で審査上の対⽴があったと伝えられ、さらに夏⽬漱⽯が新聞紙上で酷評するなど、賛否両論を呼んだ問題作として知られている。
その後も⽂展や帝展の審査員を務めながら精⼒的に制作を続けたが、⼤正末頃より、⾐笠の⾃邸での時間に重⼼を移し、絵画制作や読書、詩作といった詩書画三昧の⽂⼈的⽣活を送った。昭和13年(1938)11⽉3⽇、62歳でその⽣涯を閉じた。
京が育んだ美的な感覚、卓越した筆技、徹底した写⽣に基づく確かな描写、そして対象への共感にみちた眼差しとほのかな抒情を感じさせる洗練された画⾵が特徴。動物画で有名だが、⼭⽔や花⽊、歴史、⼈物を描いた作品にも多くの名品が残る。
- 主催:京都市、毎⽇新聞社、京都新聞、BSフジ、ライブエグザム
- 協賛:NISSHA
- 特別協⼒:公益財団法⼈櫻⾕⽂庫
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【東京会場】
会期:2027年6⽉5⽇(⼟)〜8⽉1⽇(⽇)
会場:泉屋博古館東京(東京都港区六本⽊1丁⽬5番地1号)
主催:公益財団法⼈泉屋博古館、毎⽇新聞社
特別協⼒:公益財団法⼈櫻⾕⽂庫
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見どころ① 木島櫻谷の過去最大規模の回顧展

木島櫻谷《かりくら》1910(明治43)年 櫻谷文庫蔵 2013(平成25)年に泉屋博古館で特別展「木島櫻谷―京都日本画の俊英」が開催されて以来、再評価が急速に進む木島櫻谷。その画業の全貌を紹介する大規模回顧展がいよいよ開催されます。人気の動物画はもちろん、山水画、花鳥画、歴史画、写生帖など、魅力あふれる優品が集結。京都市京セラ美術館では1987(昭和62)年以来40年ぶりの回顧展になります。
生命への共感、ほのかな抒情、描くことの喜びにあふれる木島櫻谷の世界を心ゆくまでご堪能ください。
木島櫻谷《かりくら》1910(明治43)年 櫻谷文庫蔵 見どころ②「動物画の名手」櫻谷の最高傑作《寒月》登場!

木島櫻谷《寒月》1912(大正元)年 京都市美術館蔵 上|左隻、下|右隻 1912(大正元)年の第6回文展に出品された《寒月(かんげつ)》は、最高賞を受賞した一方で、賛否両論を呼んだ作品としても話題になりました。本展は、今では木島櫻谷の最高傑作とされ人気を集める《寒月》を東京・京都の両会場通期で展示するほか、豊富な作例を通して櫻谷の動物画の魅力をあますところなく紹介します。

木島櫻谷《寒月》1912(大正元)年 京都市美術館蔵 上|左隻、下|右隻 TOPIC:最高傑作《寒月》とは

木島櫻谷《寒月》(左隻部分)1912(大正元)年 京都市美術館蔵 話題をさらった最高賞。横山大観、夏目漱石からの評価
描かれるのは、冬、雪が積もる夜の竹林。その静寂のなかに見える一匹の狐。周囲をうかがい、少し頼りなげに歩きながら、食べ物を探しているようです。
この屏風は、木島櫻谷が36歳のときの作品です。ある日、京都の鞍馬で雪に残った足跡を見つけ、空腹の狐を想像したのが制作の契機でした。本作は1912(大正元)年の第6回文展に出品され、最高賞である2等第1席を受賞しました(慣例により1等はなし)。ところで《寒月》に最高賞が決まるまでの審査について、審査員だった横山大観は以下のようなエピソードを語っています。大観は、東京の安田靫彦(やすだ・ゆきひこ)の《夢殿》が第1席にふさわしいと繰り返し説明したものの、同じく審査員だった京都画壇の代表格で、櫻谷の師でもあった今尾景年は《寒月》が最高賞であるべきだと一歩も譲らなかったそうです。
結果は《寒月》が2等第1席、《夢殿》は第2席となりましたが、このことは、発想の新しさや写実によらない精神性を評価する東京画壇の絵画観と、写生の技術や構図の巧みさを重要視する京都画壇との違いを明らかにする出来事として、たびたび取り上げられてきました。
また、《寒月》については、文展の会場でこの作品を見た小説家の夏目漱石の評論も有名です。 漱石は「夜を示す背景と、昼間にいるような狐の取り合わせが不愉快で、芸術作品ではなく写真屋の背景のような絵だ」などと新聞紙面で批判をしてみせたのです。漱石が言及せずにはいられないほど、《寒月》の注目度が全国的に高かったことがわかります。
京都画壇の伝統と革新を背負う、至高の一作
夜の闇、月の明かり、影をたたえる竹、白く光る雪。そして孤独な狐。これほどまでに抒情的な光景をよく表した作品は、近代日本画のなかでも白眉といえるでしょう。
自然を見つめる写生、雪の地面を斜めに描く伝統の偏角構図、月と動物、画面の余白が語る抒情性など、《寒月》には京都の花鳥画の伝統が息づいています。
また同時に、群青で塗った鮮烈な竹を巧みに配置することによって、西洋画に学んだ写実的な奥行表現を試みるなど、櫻谷なりの新たな挑戦も見て取れます。京都画壇の伝統と革新を背負う、至高の一作です。
木島櫻谷《寒月》(左隻部分)1912(大正元)年 京都市美術館蔵 TOPIC:櫻谷の動物画の魅力

左|木島櫻谷《獅子》(部分)昭和時代 櫻谷文庫蔵
右|木島櫻谷《厩》(部分)1931(昭和6)年 櫻谷文庫蔵情感豊かな表情に注目!
多くの動物画を制作したことで知られる櫻谷。京都画壇に学び、圧倒的な実力を誇りました。伝統的な円山・四条派の、花鳥画の筆技を基礎としながら、徹底した観察と緻密な写生を反映させ、墨と筆を自在に駆使して動物の姿かたちを活写しました。生き生きと表現された動物たちは、魂がこもっているようで、まるで今にも動き出しそうです。虎、ライオン、鹿、猪、狸に狐。画面内で種々の生命が躍動する動物画こそ、櫻谷の真骨頂ともいえるでしょう。櫻谷の動物画が特別であるとされる一つの理由は、その繊細な感情表現にあります。櫻谷の描く動物たちは、まるで人間の心が理解できるかのように、優しく、慈愛に満ちた表情で描かれ、時には憂いを帯びて見えるような、繊細で情感豊かな面貌表現がなされているのです。櫻谷が描く動物たちの眼をじっと見つめてみてください。優しさの奥にある、思慮深さまで感じることができるでしょう。

左|木島櫻谷《獅子》(部分)昭和時代 櫻谷文庫蔵
右|木島櫻谷《厩》(部分)1931(昭和6)年 櫻谷文庫蔵見どころ③ カラリストでありデザイナー。心華やぐ美の世界

木島櫻谷《菊花図》1917(大正6)年 泉屋博古館東京蔵 上|左隻、下|右隻 櫻谷の魅力は動物画だけではありません。三条室町という京都の経済と文化の中心地で生まれ育った櫻谷には、華やかで洗練された色彩感覚や、上品かつ装飾性豊かなデザインセンスが備わっていました。
本展では、カラリストとしての力量が発揮された《駅路之春(うまやじのはる)》や、琳派の構成美と写実を融合させた《菊花図》などを紹介し、心華やぐ世界をご堪能いただきます。
木島櫻谷《菊花図》1917(大正6)年 泉屋博古館東京蔵 上|左隻、下|右隻 TOPIC:色鮮やかな代表作《駅路之春》

木島櫻谷《駅路之春》1913(大正2)年 福田美術館蔵 上|左隻、下|右隻 「駅路(うまやじ)」とは、宿駅が設けられた街道のこと。本作には、春の旅路でひと休みする一行が描かれています。菜の花が咲き広がる土手、芽吹きはじめた柳、地面に散り敷く桜の花びら。華やかな着物に身を包んだ人々や、一行の荷物を運ぶ二頭の駄馬が、過ぎゆく春の情趣を伝えます。「動物画の名手」と称された櫻谷ならではの巧みな動物表現に加え、カラリストとしての鮮やかな色彩感覚も見どころです。
本作は、1913(大正2)年の第7回文展に、審査員として出品された櫻谷の意欲作。前年、《寒月》で最高賞を受賞した櫻谷が、新任審査員として臨んだ記念碑的な作品です。江戸時代の遊楽図に着想を得ながら、当時普及し始めた人工岩絵具による鮮やかな色彩とざらざらとしたマチエール、縦横の線が交差する大胆な画面構成など、新たな試みが随所にみられます。動物画、花鳥画、歴史人物画などで培ってきた櫻谷芸術のエッセンスを結集した、《寒月》と双璧をなす代表作です。

木島櫻谷《駅路之春》1913(大正2)年 福田美術館蔵 上|左隻、下|右隻 -
木島櫻谷《寒月》(左隻) 1912年(大正元年) 京都市美術館蔵
木島櫻谷《寒月》(右隻) 1912年(大正元年) 京都市美術館蔵
木島櫻谷《咆哮》(左隻)1902(明治35)年 石川県立美術館蔵
木島櫻谷《咆哮》(右隻)1902(明治35)年 石川県立美術館蔵
木島櫻谷《かりくら》(左幅) 1910(明治43)年 櫻谷文庫蔵
木島櫻谷《かりくら》(右幅) 1910(明治43)年 櫻谷文庫蔵
木島櫻谷《駅路之春》(左隻)1913(大正2)年 福田美術館蔵
木島櫻谷《駅路之春》(右隻)1913(大正2)年 福田美術館蔵
木島櫻谷《菊花図》(左隻)1917(大正6)年 泉屋博古館東京蔵
木島櫻谷《菊花図》(右隻)1917(大正6)年 泉屋博古館東京蔵
木島櫻谷《柳桜図》(左隻)1917(大正6)年 泉屋博古館東京蔵
木島櫻谷《柳桜図》(右隻)1917(大正6)年 泉屋博古館東京蔵
木島櫻谷《月下遊狸》1918(大正7)年頃 泉屋博古館東京蔵
木島櫻谷《厩》1931(昭和6)年 櫻谷文庫蔵
木島櫻谷《獅子》昭和時代 櫻谷文庫蔵

